EV・半導体の国内生産、10年間法人税優遇 知財は7年間 (日本経済新聞, 12-12)
政府・与党は2024年度税制改正で、EVなどの国内生産を10年間にわたり税優遇する制度を創設する
政府・与党は12日、企業を対象とする2024年度の税制改正の大枠を固めた。EV(電気自動車)などの生産量に比例した法人税の減税期間は計画認定から10年間とする。特許など知的財産に関わる法人税は7年間優遇する。国内での脱炭素製品の生産や研究開発を税制面で支援する。
週内にもまとめる与党税制改正大綱に盛り込む。政府・与党は24年度の税制改正で生産量や販売量に応じて法人税を減らす「戦略分野国内生産促進税制」を創設する。
支援対象はEV・蓄電池、半導体、再生航空燃料(SAF)、再生可能エネルギーなどで生産した鉄の「グリーンスチール」と植物や廃棄物から製造した化学製品「グリーンケミカル」の5分野だ。
各年度の税優遇の上限額を半導体は法人税の20%、半導体以外は40%までとする。赤字の決算期に使えなかった税優遇を繰り越す制度も設ける。期間は半導体は3年間、半導体以外の製品は4年間と定める。
EVは1台あたり40万円、SAFは1リットルあたり30円、グリーンスチールは1トンあたり2万円など支援する。26年度末までに事業計画の認定を得るよう求める。
特許などの知的財産から得られる所得を巡る税制優遇の「イノベーションボックス税制」も概要を決めた。
24年4月以降に取得した特許権や著作権の譲渡所得とライセンス所得の30%について課税所得から差し引く。25年4月から7年間を期限とする。知財ビジネスの税負担を軽くして、国内に研究開発拠点を誘致する狙いだ。
中小企業を巡る税制の改正案も大筋がまとまった。
都道府県が資本金1億円超の企業に課す外形標準課税の適用拡大では、「資本金と資本剰余金の合計額が10億円超」の企業も対象とする。過去に減資した企業を含む中小企業と新設法人には適用しない。
新基準は25年度から適用する。減資して税制上の中小企業となり、課税を逃れる動きを抑止する。
また資本金と資本剰余金の合計額が50億円超の企業の100%子会社のうち、「資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円超」の企業も課税する。負担を和らげる激変緩和措置も設ける予定だ。26年度からの適用を見込む。
中小企業の事業承継を後押しする事業承継税制の特例措置の申請期限は2026年3月まで2年間延長する。非上場株の贈与税や相続税の納付を猶予・免除する税制で、期限を延ばして利用企業を増やす。
特例措置を受けるには後継者の株式取得後の事業見通しなどの計画を都道府県に提出する必要がある。従来の提出期限は24年3月だった。申請期限を延ばし、経営者の高齢化が進む中小企業の世代交代を後押しする。
24年度税制改正は、企業向けの減税措置の創設や拡充が前面に打ち出された。自民党の税制調査会には中長期的に法人税の税率引き上げを検討すべきだとの意見もあり、来年度以降に議論される見通しだ。